労務管理一般

 
 
懲戒解雇

 ある中小企業A社(製造業、従業員数32名)の例です。 「以前から、勤務態度のよくない従業員B(営業、勤続年数2年)に対してときどき注意をしていましたが、一向に改まりませんでした。

 ある日、社長が得意先へ挨拶に出向いたところ、帰路途中の喫茶店の前にその従業員の車があったので、その日の夕方、Bが会社へ戻ったときに、その日の仕事の状況を問いただしたところ口論となり、Bが事務所内で社長に対し暴言を吐きました。そこで社長はそれまでの勤務態度不良のことなどもあり「懲戒解雇にする(明日から来なくてよい)旨」を伝えたところ、Bは出て行ってしまい、その後出社しませんでした。約3週間後、Bが弁護士を通じて「懲戒解雇の無効、賃金等の支払い」を求め提訴してきたので、会社側も弁護士に依頼し争ったのです。結果、会社の就業規則の不備およびそれまでの慣習等もあり、会社の思うように裁判が進みませんでした。結局、裁判所からの和解勧告もあり、「退職する代わりに、賃金のほか、80万円を会社が支払う」ことで和解したということです。したがって、弁護士費用等を含めると120万円を超える金額の支払いが必要となったのです……」 A社では、これを教訓に今後の労務管理等について見直しを進めることとなりました。

  このように会社が多額の金銭を支払わなければならなかった問題点はどこにあったのでしょうか。もちろんこの場合、「数回サボっているところが発見されている」、「社長に暴言を吐いた」といった程度の事情の下でいざ裁判となれば、従来の判例からは「懲戒解雇処分」は認められにくいと考えられます。ただ、普段の労務管理をしっかり行っていれば、結果は異なったものとなる可能性は十分ありました。そこでこの会社の就業規則、賃金規定等について社長とともに検討し、以下の点などを見直すこととしました。 

 @ 就業規則はあるが、「労働基準監督署で配布されたものを一部変更した」就業規則ではこの例

  のような懲戒問題については対応できないので、懲戒処分等も含め全体的に見直す必要がある

  こと。 

 A A社の場合、勤続年数3年未満の従業員には退職金を支給していなかったが、退職金規程が

  なく、また就業規則にも記載されていないのでこれらを整備する必要があること。 

 B この例のような従業員に対しては、普段から教育・指導に力を入れること。またその際には必ず

  記録をつけ、必要な場合には就業規則に基づき、「けん責、減給、出勤停止等」の懲戒処分を含

  め、的確に対処し、またルール化すること。さらに十分な証拠書類を残しておくこと。 

 たまたまA社の場合は勤続年数2年の従業員だったので80万円で和解しましたが、勤続年数20年、30年といった方にこのような問題が起こると、金銭的にも相当な額が強いられる可能性もあると考えられます。普段からきちんとした労務管理を徹底することで会社の意に反した金銭の出費は避けることができます。もちろんこれらには個々の経緯等があり、すべての結果がこうなるとは限りません。しかしながら、企業のリスクマネジメントという面で然るべき対策が必要となります。

 


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